「何もない」美しさ【青森】
年末年始、青森県八戸市の実家に帰省していた私は、暇を持て余し、青森市まで日帰りで出かけることにした。
八戸駅から青森駅までは、ローカル線青い森鉄道で約2時間である。
10年ほど前までは東北新幹線が八戸駅までしか通っておらず、その頃は八戸ー青森間もJR線だったが、現在はローカル線となり運賃も高くなってしまった。
青森市を訪れたのは約10年ぶりであった。
青森駅に到着すると、少々の懐かしさはあったものの、あまり代わり映えのしない光景に物足りなさを感じたのも事実だ。
それでも、ねぶたの紹介をしているワ・ラッセ、大型土産物店のA Factoryなど、私が青森県に住んでいた頃にはなかった新しい施設が幾つかあった。
それらの施設を見学し、夕方、再び青い森鉄道に乗り八戸駅に戻った。
電車に揺られながら、今回の小旅行は、楽しめはしたが、これといって印象に残ることはなかったと、考えていた。
そのときである。
電車の中の何名かが、外の風景にカメラを向け始めた。
急いで外に目線をやると、「何もない」以外の言葉では表せないような、美しい田舎の風景が広がっていた。
奥には枯れた山、手前は田んぼなのだろうか、雪が積もっておりなんとも彩度の低い光景だ。
私は、自分がこの「何もない」風景に心動かされたことに驚いていた。
というのも、青森県に住んでいた10代の頃は、何もない青森に嫌気がさし、長期休みの度に「渋谷に行きたい」「ディズニーランドに行きたい」と言っては親を困らせたものである。
大人になり、寂しさの中に美しさを感じることが出来るようになった。
そのことに気づけただけでも、わざわざ青森市まで出かけてよかったと思わせてくれる、良い年末の1日となった。
寂しく、美しい夕方の青森
〜この日のルート〜
休日は青い森ワンデーパスというお得な切符があるのでそれを利用した。